(2023年10月4日)

「なんか急に寒くなってきた」

 

患者さんから、良く聞くセリフです。2023年の夏は「猛暑」というより「酷暑」がぴったりくるシーズンでした。「早く秋が来ないかな」と多くの人が思っていたでしょう。

 

しかし10月の声を聞いた途端、朝晩の冷え込みが厳しくなりました。体調を崩して受診する方も増えています。

 

秋は寒さ対策が必要ですが、季節の移り変わりに気付かず、体が冷えてしまったなんてコトも。

 

気がつかないのは、秋独特の気候が原因です。


感じる温度と実際の温度

夏と秋とでは、寒暖計の気温が同じでも、体感温度は異なります。なぜなら、環境や体の仕組みにより、温度の感じ方が違ってくるからです。

 

1.湿度
湿度が高いと汗が蒸発しにくくなり、体の熱が逃げず、暑く感じます。逆に湿度が低いと汗が早く渇くため、体温が下がりやすく、寒く感じることが増えます。

 

秋は夏より湿度が下がるため、同じ気温でも寒さを感じるようになります。

 

2.風
風に当たると体の表面から熱が奪われ、寒く感じます。秋は空気も乾くため、風に吹かれると思った以上に体が冷えてしまいます。

 

3.日射し
秋は夏より日光の強さが弱くなるため、家の壁や屋根を温める効果が少なくなります。部屋の中は建物からの輻射熱が少なくなり、体感温度は下がってきます。

季節変化の感じにくさ

また、夏から秋に移り変わる時期は、なかなか予測しにくいものなのです。

 

1.慣れの効果
夏の終わりから初秋にかけて気温は下がっていきますが、その変化はゆっくりなため、分かりにくいモノ。

 

そのため、気がついた頃にはかなり気温が下がっていて、急に寒くなった感じがします。

 

2.生活リズムや忙しさ
日々慌ただしく過ごしていると、外の気温にあまり注意を払わないことがあります。

 

さらに最近の住宅は気密性が高く、快適な室温で過ごせます。その結果外の気温の変化が分かりづらく、おもてに出た途端に体が冷えることも。

 

3.天気予報の予想気温
天気予報は予想気温も知らせてくれて、便利です。しかし同じ気温でも、湿度、日照、風の影響で、感じる温度は変わってきます。

 

夏と同じ感覚で過ごすと、体感温度の違いから、体が冷える原因になります。

寒さがカラダに与える影響

寒さはカラダを冷やし、免疫力の低下から風邪を引きやすくなるコトは、有名です。しかしそれ以外にも、生活習慣病、特に高血圧と痛風に大きな影響を与えます。

血圧への影響

寒くなるとカラダの血管が縮むため、血圧が上がってきます。夏に比べて10mmHgほど高くなる人も多いのです。次の点に気を付けると良いでしょう。

 

1.室温の管理
特に気を付けたいのが早朝。起きるときに部屋が寒いと、思った以上に血圧が上昇し、脳卒中や心臓病になってしまうことも。秋は早めに暖房の準備をすると良いでしょう。

 

2.適度な運動
涼しくなると体が縮こまってしまい、動くのがおっくうになります。しかし「運動の秋」とも言われているとおり、体を動かすには絶好のシーズンです。

 

運動には血圧を下げる効果があります。適度な運動を日常にと入れることが、血圧を安定させるコツです。

痛風への影響

寒くなると足が冷え、痛風発作が起きやすくなります。特に宴会の翌日、足が冷えた状態で長距離を歩いたりすると、発作が起きやすくなります。寒くなる時期には、次のようなポイントに気を配ると良いでしょう。

 

1.適度な水分摂取
あまり汗をかかない秋は、水分を摂らなくなります。気がつくと脱水となり、痛風が起きやすくなってしまいます。

 

2.食事やお酒の注意点
秋は美味しい食材も増え、食欲も増します。ついつい食べ過ぎることで尿酸値が上がり、発作が起きやすくなることも。

 

またアルコールは尿酸値を上げるため、痛風発作が起きやすくなります。これは焼酎でも同じ。

 

食事は美味しく食べながら量を調節し、サケを飲みすぎないようにしましょう。

早めの対策が大切!

秋の寒さは、気付かないうちにやってきます。体調を崩しては「食欲の秋」や「運動の秋」を楽しむことが出来ません。

 

また持病の悪化は、生活満足度を下げてしまいます。寒くなる前に準備をすることで、良い季節を楽しみましょう。