不眠の原因は、日中の生活習慣にある事がほとんどです。つまり多くの不眠症は、生活習慣病の一種と言って良いでしょう。
患者さんからは「何時間眠れば良いのか?」という質問をよくいただきます。
ベストな睡眠時間は個人差が大きく、1つではありません。一般的に年齢が上がると、必要な睡眠時間は少なくなります。
そもそも、眠ることが目的ではない
なぜ人間は眠るのでしょう?それは、起きている時間を充実するためです。「眠ること」が目的になってしまうと、 「眠れない」事が悩みとなり、あっという間に「不眠症」になってしまいます。
多少眠れなくとも、日中の生活に支障なければ、問題ありません。
不眠の原因
1)体内時計の準備が出来ていない
人間は起きてから16時間後(子供は14時間後)に、本格的に眠くなります。早く床についても、なかなか眠れません。
2)睡眠物質が貯まっていない
起きている間、脳の中には「睡眠物質」が貯まってきます。これが十分貯まっていないと、良い睡眠がとれません。
3)深部体温が下がらない。
眠るときには、身体の奥の体温が下がります。これが高いままだと寝苦しく、気持ちよく寝入ることが出来ません。
4)緊張や心配、ストレスがある
テストの前の日、大切な用事の前の日、普段のストレス、等があると、眠気を感じにくくなります。
5)明らかな病気がある
風邪をひいたり、腰が痛かったりすると、眠れなくなります。また睡眠時無呼吸症候群、うつ病でも不眠が出てきます。
良い睡眠をとる生活習慣
良い生活習慣は、不眠症になる前に作り出すことが大切です。不眠症になり日常生活に支障が出てくるようなら、心療内科や精神科などで診てもらうことも、場合によっては必要となります。
1)起床時間を一定にする
用事で遅く寝ることになっても、同じ時間に起きることが、良い睡眠習慣をもたらします。
2)朝起きたら日の光を浴びる
窓の近くで過ごす、外に出るなど、朝に太陽の光を浴びる習慣により、体内時計がしっかり働くようになります。
3)朝食をバランス良く食べる
朝食を摂って胃を動かすことも、体内時計の調整になります。
4)昼寝を上手にとり入れる
昼食後、午後3時までに30分未満の昼寝をすると、午後の眠気が少なくなります。目を数分間つぶるだけでも、効果があります。
5)寝だめをしない
休みの日に起きる時間がずれると、翌日に影響します。
6)眠くなってから床に入る
ふとんは寝るところ、と身体に覚えさせましょう。
7)日中は活動的に過ごす
家でだらだら過ごしていると身体が疲れず、睡眠物質があまり作られません。
8)午後3時以降はうたた寝をしない
せっかくたまった睡眠物質が、少なくなります。
9)寝る前に風呂に入る
夜はなるべく湯船につかって、体温を上げましょう。その結果、寝る頃には身体の中の熱を放散しやすくなり、寝付きが良くなります。
10)寝る前1〜2時間は、スマホやテレビを見ないようにする
スマホ、テレビは脳に刺激を与えるため、寝る前に見ると眠気を感じにくくなります。
11)寝る前に暗い部屋で過ごす
光の刺激がなくなることで、眠気を引き寄せます。
12)夕方以降はコーヒーや緑茶を飲まない
カフェインは深い眠りを少なくして、睡眠の質を悪くします。
タバコ、寝酒について
ニコチンは脳を刺激して、眠りを妨げます。アルコールは、寝付きが良くなる反面、睡眠時間を減らします。両者とも睡眠の質が悪くなるため、快眠のためには避けましょう。
禁煙については、こちらをご覧ください。
→禁煙成功の3つのコツ
ストレスはどうコントロールする?
以下にいくつかの方法を示します。
・悩みは1人で抱え込まず、誰かに打ち明ける
・完璧主義を捨て、「八分目で良い」と考える
・場合によっては目標を下げることも考える
・きちんと「自分のための時間」をとり、休む
・生活にユーモアを取り入れ、笑って過ごす(笑うことで心が軽くなります)
・嫌な経験は客観的に振り返り、対処法を確認して書き出し、その後忘れる
・身体を動かして、汗をかく
明らかな病気による不眠症について
うつ病、睡眠時無呼吸症候群などが原因で眠れないときは、病気に対する治療が必要です。また不眠状態が続くと、眠れないことに対する不安が強くなり、ますます眠れなくなります。これも専門的な治療が必要です。
睡眠薬について
睡眠薬には様々な種類がありますが、一時的に記憶障害となる、起きた後もぼーっとする、早く目が覚めてしまう、日中ふらついて転んでしまう、急にやめると眠れなくなる、などの副作用を持つものがあります。自分に合った睡眠薬を見つけるには、専門医を受診することをお勧めします。