高血圧とは、外来血圧:140/90mmHg、家庭血圧:135/85mmHgを超えているときに診断される病気です。
日本の高血圧患者は、4,300万人いると推定されています。しかし、治療を受けている人は約1,000万人と、全体の23%しかいません。
ありふれた病気ですが、放っておくと脳卒中、心筋梗塞、腎不全などへ発展する可能性の高い病気です。
当院では高血圧外来を行っているため、患者さんから多くの質問が寄せられます。
妊娠、出産、授乳の時に使える血圧の薬があるため、多くの場合可能です。
妊娠中の高血圧治療については、
・妊娠高血圧症候群
・高血圧合併妊娠
の2つがあります。
妊娠後に血圧が上昇してくる場合、妊娠高血圧症候群が疑われます。通常の高血圧症とは異なるメカニズムのため、産婦人科でしっかりとした管理が必要です。こちらのサイトが参考になるでしょう。
もともと高血圧症のヒトが妊娠した場合、こちらとなります。通常よりは高めの160/110mmHg未満を目標に、血圧を下げていきます。
生活習慣の是正が第一です。血圧の薬は種類が限られるものの、使えます。当院でも何人か診ていますが、高血圧専門医と連携して血圧を薬でコントロールしながら、全員無事に出産しています。
ほぼ全ての血圧の薬が、内服可能です。代表的な薬であるニフェジピン、アムロジピンなども、ほとんど母乳には出てきません。
いわゆる「メタボ」の状態で血圧が高い方は、減量により血圧が下がることがほとんどです。
また塩分摂取量が多い方が減塩すれば、下がることもあります。季節的に冬には血圧が高く、夏には下がる方もいます。
このように生活習慣の改善、季節変動で血圧が下がれば、血圧の薬をやめることが出来ますし、当院に通院中だった人でも減量に成功し、実際やめた方もいます。
また日常生活でストレスを受けて血圧が上がっている人は、退職などでストレスから解放されると血圧が下がり、クスリを飲まなくとも良くなる場合があります。
二次性高血圧症のため血圧が上昇している人は、原因となっている病気を治療すると、血圧が下がってクスリがいらなくなるときがあります。
しかし血圧の高い状態が長く続くと、血管に負担がかかり動脈硬化が進んで、ストレスから開放されても血圧が下がらないこともあります。このような人は、やはりずっと血圧の薬を飲み続けたほうが良いでしょう。
降圧薬内服により、咳、顔が赤くなる、ぐったり間、尿酸値上昇、EDなどの副作用がみられることがあります。
これらの副作用を避けるため、最近は各降圧薬を少量ずつ、複数種類用いることが多くなってきました。
結果的に錠剤数は多くなりますが、生活の質を保ったまま、しっかりと降圧出来る場合が多いようです。
ただ、降圧薬で副作用がみられていても、その薬が体調維持のために必要なこともあり、自己判断で降圧薬を中止するのは危険です。主治医と相談ください。
本態性高血圧の治療としては、まず生活習慣の改善を目指し、クスリを使わない治療を行います。
減塩:山形県の塩分摂取量は1日10-13gと言われていて、日本の中でもトップクラスです。「自分はそんなに塩分を摂っていない」と思っていても、気がつくとかなりの塩が身体に入っています。
禁煙:タバコは高血圧だけではなく、様々な病気の原因になります。なお、今流行のアイコスなどの電子タバコは、害が少ないと言われていますが、売り出されてから年数が経っておらず、何らかの有害物質が含まれている可能性があり、お勧めしていません。
禁煙については、こちらをご覧ください。
→禁煙成功の3つのコツ
節酒・禁酒:サケ・アルコールは、1日日本酒1合未満なら、血圧に良い影響をもたらすかもしれない、と言われています。しかし、日本酒1合で満足するヒトは、あまりいないでしょう。しっかりと休肝日を作ることが大切です。
リラックスする:ストレスは、なかなか「なくす」のが難しいものです。上手に発散させるコツをつかむと良いですね。
減量:肥満は、糖尿病、高コレステロール血症、痛風の原因にもなります。いわゆる「メタボ」の人は内臓脂肪が多く、わずか1-2kgの減量で、血圧、糖、コレステロールの値が良くなる場合が多いです。
以上のような生活習慣の改善を行って血圧が下がれば、クスリは不要です。
血圧上昇には、「遺伝」「年齢」「生活習慣」の3つの原因が複雑に絡んでいます。ただ、「遺伝」や「年齢」よりも「生活習慣」の方が大切です。
高血圧になりやすい生活習慣は、塩分の摂り過ぎ、タバコ、酒、ストレス、肥満が代表です。
これらが原因で起こる高血圧を、「本態性高血圧症」といいます。それ以外に、病気が原因で血圧が上昇する、「二次性高血圧症」もあります。
高血圧の自覚症状は、ほとんどないといわれています。
しかし降圧治療後、めまい、肩こり、頭痛などが治ったという人がおり、このような自覚症状に気づいていない人もいます。
血圧を下げてみて、肩こりがとれるなど、後になって自覚症状だったとわかることもあります。
生活習慣の改善を行っても改善しないときには、内服薬(降圧薬)による治療を考えます。降圧薬には多くの種類があり、最近では複数の薬を組み合わせることにより、より確実に降圧効果を狙う傾向にあります。
しっかりと血圧を下げることにより、脳卒中、腎臓病、心臓病などの可能性を減らすことが、わかっています。
クスリを飲んでいるのに血圧が下がらないときには?こちらをご覧ください。
→クスリで血圧が下がらない!
本態性高血圧症では、生活習慣の是正で血圧が下がれば、治ったといえるでしょう。
また、腫瘍や腎動脈狭窄などにより血圧を上げるホルモンが増加し、その結果高血圧になっている状態を二次性高血圧といいます。
代表的なものは、原発性アルドステロン症、腎血管性高血圧症、褐色細胞腫、クッシング病です。高血圧全体の5〜10%といわれています。
早期に腫瘍摘出や血管拡張術を行うと血圧が下がり、治った状態になります。そのため、なるべく早めに診断する必要があります。
二次性高血圧の検査は、採血と腹部超音波です。空腹で来院してもらい、30分臥床してホルモンの状態を落ち着け、その後に採血します。また、大きな腹部腫瘍があるか、腹部超音波検査で調べます。
普段は血圧が高くないのに、健康診断や診察時だけに血圧が高くなる人がいます。医者などの白衣を見て血圧が上昇することから「白衣高血圧症」と呼ばれています。
原因は一言で言うと「緊張」です。病院などの外では普通の血圧のため、あまり問題ないとも言われてきました。
しかし近年、通常の高血圧に移行する人が出てくることが、わかってきました。定期的な血圧測定を行い、高くなるようなら治療を受けた方が良いでしょう。
また、血圧治療中の方でも、診察室で血圧が上昇してしまう人がいます。その場合は上腕式家庭血圧計で、自宅の血圧を記録してもらい、クスリは家での血圧を参考に調整します。
高血圧治療の指針となる「高血圧治療ガイドライン2019」が発表されました。高血圧の定義は変更ありません。注目点は、以下の2つです。
1)正常血圧は、外来血圧120/80mmHg未満
120/80mmHgを越えて血圧が高くなるほど、心臓病、脳卒中、腎臓病などの危険が高まることがわかってきました。そのため120/80mmHgから140/90mmHgの間を正常高値血圧・高値血圧として、要注意ラインと位置づけています。
2)治療による目標血圧
75歳未満の成人、脳卒中後、心臓病、糖尿病、尿蛋白陽性の慢性腎臓病、抗血栓薬内服中:130/80mmHg未満
75歳以上、首や脳底部の動脈が狭い人、尿蛋白陰性の慢性腎臓病:140/90mmHg未満